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第67回日本選手権競輪

村上義が三度ダービー王

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別線に隙を与えない近畿勢がレースを支配。番手まくりの村上義弘選手が優勝し、稲垣裕之選手と抱き合う。

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 ファンに愛され、競輪に人生を捧げてきた男が、三度、ダービー王に輝いた。
 「自分の人生が競輪だと思っているし、人生を救ってくれたのも競輪だった」
 平原康多、武田豊樹の関東勢。地元の深谷知広に成田和也のタッグ。輪界の頂点を決めるダービーファイナルに、ふさわしいメンバー。その中で4車結束の近畿勢が強い絆と、強い思いでレースを支配。「最高の先行ができた」と、胸を張る稲垣裕之が、赤板で先頭に立つと勝負の流れは近畿ラインへ。すんなりと5番手をキープした平原が、最終ホームから巻き返しに出たが3番手の村上博幸が外に振ってけん制。村上義弘は武田、深谷の必然の反撃に、最終バック手前から番手まくりを打った。
 「とにかく今日のレースの流れを作ったのは稲垣ですし。稲垣が思い切って行ってくれたので、すごくかかりがよかった。3コーナーぐらいまで誰も来れないかなと思ったんですけど、ホームで平原が見えたんで、そこで僕がちゅうちょするとライン全滅。やっぱり脚力的には平原、武田さん、深谷っていう自力の強い選手が3人も後ろにいますから、とにかくちゅうちょすると自分のラインが沈んでしまうと思って思い切り踏みました」
 平原を不発はしたものの、武田、深谷が迫り来る直線。いまの輪界を代表する三つ巴の踏み合い。真っ先にゴールを駆け抜けたのは、弟の博幸のアシストを受け、近畿の仲間の信じた村上義だった。
 引き揚げて来た検車場で報道陣に囲まれた村上義は、選手会脱会騒動での苦しい胸の内を明かし、「自分だけじゃない。みんなが苦しかったと思います」と声を詰まらせた。
 「自分では無我夢中だった。博幸が横に張ったのがわかったんで、とにかくゴールまでと思って、はい。4コーナーを回ったときに勝手に目を閉じたのか、あまり記憶がないというか。ゴールした瞬間に武田さんと深谷が横にいるのが見えて、ゴールした瞬間の着差とか、そういうことは全くわからなかったです。(ゴールしても優勝がわからなくて)博幸が来て、僕が優勝したというのを伝えてくれた。声援も大きかったし、本当にその声援が今回の自分を支えてくれたと思いますし、普段の日本選手権とは違う挑み方だったので、苦しい6日間でしたけど、その声援に支えられて来れたので、何とかその声援に応えたかった」
 あとのない2次予選では、番手に飛び付かれるも大立ち回りで競り落とし稲垣を差し切ってのワンツー。ファンの気持ちに背中を押され、神がかり的な勝ち上がり。苦境に陥りながらも、ファンの期待に応えたい一身が村上義を奮い立たせた。
 「(これからは)4月いっぱいは、共同通信社杯まであっ旋があるので、今までずっとファンの皆さんに支えてもらったんで。そこまではしっかり走って、そこから先のことは、その後に考えたい。1年間競輪から離れるということに自分が耐えられるかどうかっていうのが、ちょっと自信もない。本当に今回の一連の行動でファンの皆さまにも関係者の皆さまにも混乱を招いたことは大変申し訳なく思ってます。(自分たちは)レースで返すしかないと思っている」
 選手会脱会騒動をファンに謝罪。1年間の自粛勧告で5月以降は白紙の状態だが、「競輪はすばらしいし、愛する気持ちは変わらない」と締めくくった村上義。その生き様こそが競輪ファンを虜にしてやまない。村上義のカムバックをすべての競輪ファンが、待ち望んでいることだろう。

 近畿の結束の前に目標の平原が外併走で力尽きる。武田豊樹は村上義が番手まくりを放つと同時に自力にチェンジ。自ら踏んで村上義に迫ったが、村上義を交わすまでには至らず。
 「(平原に)任せていたので、悔いはないです。前の平原君が頑張ってくれたし、あともう1車前だったら…。近畿のラインに勝つのは無理でした。若手を育ててきた、村上(義)君がご褒美をもらったということですね」

 8番手からまくり追い込みの深谷知広は、外を力強く伸びたが3着での地元表彰台。多くのスター選手が自粛となる選手会脱会にも、口を開く。
 「これだけのメンバーでできる価値のあるG1は、今年はこれが最後なんで。だからこそ獲りたいっていう気持ちがあったけど、それで負けたのは今の実力です。いままで経験した中で一番いいレースだった。すばらしい2人と表彰台に上がれたはよかったです。選手会は選手を守る立場であるのに、こうなってしまっているのは(同じとして)選手として悔しい。(選手会騒動で自粛する選手が多くなって、SS班としての責任を)ひとりで背負い切れるかっていったら難しいけど。そういう自覚はしっかりと持って走りたい。選手会にも声を上げていきたい」

 「デビューして村上(義)さんのG1優勝に貢献するのがひとつの夢だった」と、稲垣裕之は通過点ながらも、村上義の優勝を心底称える。
 「こんなにすがすがしい気分になれるんやなって感じです。最高の先行ができたし、そのあとに後続を寄せ付けない村上(義)さんの走りを後ろから見てて、気持ちが伝わってきたし。こんなにうれしいことはない」

深谷知広がいち早く出てスタートを取った。初周は深谷ー成田和也、平原康多ー武田ー内藤秀久、稲垣裕之ー村上義弘ー村上博幸ー稲川翔の順で並ぶ。
レースが動いたのは青板周回の3角から。まずは稲垣が上昇して前を押さえると、深谷はすぐに車を下げて誘導の後ろが入れ替わる。深谷がさらに8番手へ下げていくと、稲垣は打鐘前から誘導を斬って先頭に躍り出た。そして稲垣は緩めることなく、そのままフカして主導権を握る。最終ホームを通過すると、平原が反撃を開始し、番手を上げて行く。その平原が視界に入ると、村上義は躊躇なく番手まくりを敢行。一方、これで平原の脚が止まると、武田が自力まくりに転じて応酬する。両者のまくり合戦となるなか、村上博もこれに加勢して武田をブロックにいく。武田は必死で堪えるが、外併走が精一杯。結局、村上義がそのまま押し切ってダービー連覇を達成した。武田が2着となり、後方から深谷が迫ったが3着まで。

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