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第29回 全日本選抜競輪

村上博が岸和田GP一番乗り

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怪我と戦いながら10年のダービー以来となるG1制覇を遂げた村上博幸選手。岸和田グランプリ一番乗りを果たした。

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「ホンマに長かったですね」
10年の松戸ダービーでは、劇的な兄弟ワンツーで初戴冠。その年のグランプリチャンプにも輝いた村上博幸だったが、翌年2月の西王座でのビッグ制覇を最後に大ギア化の波に飲み込まれ、ビッグVは遠のいた。
「あきらめずにやってきたけど。グランプリを獲って西王座を獲ったあとは、つらいことしか出てこないですね」
一昨年の3月には練習中の怪我で右足の腓骨筋腱(ひこつきんけん)を脱きゅう。2年間、足首をコルセットで固定したままの生活は、今も変わることがない。そのことを言い訳にしないためにも、タイトル再奪取までは怪我を公にすることはなかった。
「正直、自分では終わったと思ったけど。4日制以上のG1のタイトルの2個目がすごく欲しかった。またタイトルを獲るまでは、このことは…、って思っていました」
選手生命の危機に陥りながらも、不屈の精神と仲間の助けで復活。しかしながら、今シリーズにタイトルの予感があった訳ではない。
「今回も自分としては特別デキがいいわけでもないし、こんな風に決勝に乗ったのは不思議な感じでした。大ギアになってうまくレースがかみ合ってなかったし。ここまで来られたのは、やっぱり京都勢をはじめとした近畿の選手たちのおかげだと思いますね」
兄の背中を追い輪界へと足を踏み入れた村上博は、仲間への感謝の言葉をこう並べる。久しぶりのG1決勝の舞台に兄、義弘の姿はなかったが近畿勢が3車で鉄の結束。脇本雄太が主導権を握り、新田祐大に割り込まれながらもまくりを打った松岡健介と、仲間の存在なしで優勝は成し得なかった。
「脇本君はいつも通りのスタイルだと思ったし、番手に新田君が粘る展開になったけど。そこで3番手を確保できたのが大きかった。それでも大ギアの流れ方は前とは違ったし、自分も微妙に脚を使っていた。後ろからまくりが来そうな雰囲気もあったし、自分は松岡さんの車の出と、自分のコースを取られたアカンって思っていた」
松岡が新田に合わされると、最終3コーナーで村上博は新田にスイッチ。新田が平原康多をブロックしインが空くと、落車を避けて俊敏にコースを突いて先頭でゴールを駆け抜けた。
「(新田が動いた時も)冷静に走れたし、コースを探せた。今日は近畿の3人が力を出し切った結果だと思います」
4年ぶりのG1奪取。一番乗りで年末のグランプリのキップを手にした村上博。今年はグランプリが初めて近畿地区のの岸和田に舞台を移す。それだけに並々ならぬ思いは、近畿の選手すべてが共有していて、それは村上博も同じだ。
「岸和田でのグランプリは初めてのことなんで。近畿がひとりでも多く乗ることが、盛り上がっていくと思う。成長した姿でグランプリに戻りたいし、また兄弟で乗りたい」
兄と一緒に最高瞬間を味わった10年のグランプリ。兄の復調を待ち、今度は地元地区の岸和田でもう一度兄と大舞台に立とう。

新田の押し上げによって、最終2センターでアクシデント。平原、神山雄一郎、浅井康太が続いて落車。新田に合わされ不発ももめげずに踏んだ松岡健介が、繰上りでの2着となった。
「新田君に粘られてしまったのは誤算だったけど。新田君もきつそうだったし、まくりに行った。もうちょっとモガキ合いできるかと思ったんでけど…。そこで僕はもうダメでした」

打鐘で新田の踏み出しに離れた斎藤登志信は、3着の表彰台も新田を気遣いながら振り返る。
「新田は優勝する気持ちがあったと思うし、自分がそういう流れのレースをしてあげたかった。せめて新田の後ろに自分が付いていくことができていれば…。また、新田は次に(G1を)獲るにはどうしたらいいのか考えないといけない」

逃げた脇本の番手を手に入れた新田祐大だったが、仕掛けミスは反省。2着入線も審議の結果は押し上げで失格。
「番手を取り切ったのはよかったけど、出るタイミングを失敗した…。今日は自分たちが前を取らされる形になったし、ああなったのはたまたまですね」

最終ホーム過ぎに6番手からまくり上げた平原康多は、新田のブロックで落車。「あれで我慢できないのは弱いってことです」と、痛々しい姿で検車場に現われ、言葉少なに帰り支度を始める。また、神山雄一郎は「(平原に)付いていって2、3着はあると思った。康多はいい感じで行った…」と、言葉を振り絞った。

やや見合ったスタートから誘導員を追ったのは北日本コンビ。新田祐大―斎藤登志信で正攻法に構えると、3番手以降は平原康多―神山雄一郎―浅井康太―山賀雅仁―脇本雄太―松岡健介―村上博幸の並びで落ち着いた。
赤板前から各ラインのけん制が始まる。前受けの新田や平原、浅井はしきりに脇本の動きを確認。車間を切っていた浅井は赤板過ぎから一気に踏み上げると2コーナー過ぎから先頭に立つ。合わせて踏んでいた新田は引けないと見るや、脇本の番手でイン粘り。2センターで番手を取り切ると、浮いた松岡を村上が3番手に迎え入れる。一本棒になったことで平原は早目の巻き返し。5番手で斎藤のけん制にあったが、力任せに前団に迫ると、2センターからは松岡に合わせて番手から出ていた新田と一騎打ちの態勢に。しかし、4コーナーで新田が平原を押し上げると、平原、神山に浅井までもが落車。松岡後位から新田にスイッチしていた村上は空いた内を逃さず直線一気の突き抜け。見事に今年最初のG1を制した。2着入線の新田だったが審議の結果失格に。落車を避けた松岡、斎藤の順で2、3着に繰り上がった。

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